
午前4時。カツオと男たちの闘いは突如始まった。そこは大平洋の真っただ中、小笠原近海の黒潮の上である。低気圧が通過したばかりの海はうねり、小雨まじりの風が横殴りに吹きつける。土佐のカツオ一本釣り漁船「第21善勝丸」の16人の男たちは、船先に並び、竿を振る。そして、次第に明るくなってきた朝の空に、次々とカツオが舞った。 カツオの一本釣り漁は、3月から12月初めまで行われる。1年の大半は、海の上で魚群を追いかけている。まさに「黒潮の狩人」だ。近年は大型まき網船が主流だが、豪壮な1本釣りも今だ健在である。 釣り上げられたカツオは、背後の甲板にたたき落ち、跳ね返り、身を激しくばたつかせ船倉に滑り込む。魚体は50センチ、5キロほど。またたく間に甲板は魚の血で赤く染まる。入り乱れる竿、釣り針とカツオの乱舞。そこはまさに戦場だった。 「初めはよく食いつくが、すぐに魚は飽きちまう。勝負は最初なんだ」 男たちは息つく間もなくカツオとの格闘を繰り返す。釣っては放り、投げ入れては抜き上げる。 戦いは2時間に及んだ。捕ったカツオは10トンを越えた。 |